良い指導者、優れた指導者、秀でた指導者。

良い指導者、優れた指導者、秀でた指導者。

其れはまだ二十歳になる少し前の十九歳の時だった。

トレーナーは募集して無いが水泳のコーチなら募集してると言われ、ソレでも良いからと潜り込んで始めた某大手スポーツクラブでのアルバイト。 休憩時間やシフト時間外に毎日ジムに顔を出し、掃除や片付けの手伝いをコツコツやっていたらチーフが推薦してくれ、晴れてトレーナーとしてもスタートを切った。

始めて一年弱の頃、自分より一回りほど年上の、職場仲間三名でいつもやって来る男性会員さんたちがいた。 とっても気さくなお三名で、毎回指導で会うのが楽しみだった。

暫くするとそのウチのおひとりがトレーニングにとってもハマってくれて、毎日のようにジムへ来るようになり、身体もあっという間に一回り大きくなって喜んでくれた。

そんなこんなナある夜、ハマっている人以外のお二人がジムに顔をだした。 まだ若い小生は何の気ナシし、「最近いつもお二人で、三人で来ないですよねぇ~」と話しかけたら、一瞬お二人の顔が曇った。 そして三名で一番年長の会員さんが話し始めた。

『オオトモコーチだから聞いてもらいたいんだけど、最近アイツ(ハマってる人)会社に来ると毎朝ね、 「イヤァ~、昨日胸トレを○○種目○○セットやってパンパンだよ~!ほら触って触って!!」 って言って来るんだよ。 別に俺らは奴と友達だから構わないんだけど、会社にはそんな事やってる暇あったらもっとちゃんと仕事しろよ!と思う人もいるんだよね...』

凄く衝撃的でショックだった。 望むものを提供して望むとおりになって。 だけどそれがその人を不幸にしているかも知れないという事が存在している事に、若すぎたせいか気が付きも考えもしなかった。

"良い指導者は正しい指導が出来る。 優れた指導者は優れた指導が出来る。 そして秀でた指導者は導く事が出来る" という言葉を、その後数年経ってから海外の某有名指導者著の本で読んだ。

知っている事を教えるだけが指導だと思ったら大間違いだ。 其れが治療なら尚更。 欲望は何処まで行っても欲望なのだから。