打撲や捻挫、ぎっくり腰等、急性期の治療は勿論だが、当院の専門は慢性疼痛疾患。 長年なかなか症状が良くならないと言ってやって来る患者がその殆ど。
治癒と言うゴール、成功を手に入れる定義にはタイプの異なる二つ人間が存在する。
ひとつは失敗を恐れず前進する者と、もうひとつは焦らずじっくりその機を待つ者。
だが失敗の定義はただひとつ、成功の定義、そのどちらにも当てはまらないタイプの人間だ。
何にせよ慢性的に問題を抱えている時点で、その答えでは無く、其処へ至るまでのプロセスを自分自身の中で根本から大きく見直す必要性がある。 是が出来る人間と出来ない人間で、失敗と成功に分かれるのである。
例えば運動、スポーツをしていて痛くなったと言ってやって来る患者が居るとしよう。
打撲や捻挫など、明らかにグキッ!バキッ!!とやってしまったのであれば、大抵の場合患部だけ、痛いところ集中の治療やケアで治癒するであろう。 しかし、とりわけ特に是と言ったグキッ!バキッ!!は無かったのだが、だんだん痛くなり、運動後に強い痛みに襲われたりする事も多い。
コートがハードコートだったからとか、相手が強い球を返す人だったせいで、膝が肘が手首がと言うテニス愛好家であったり、新しいスパイクのせいで腰がとか、コースやペースのせいで足首や膝がと言うランナーであったり。 まぁ、ウチはそんな患者を常にウン十人も抱えているのだから普通だが。
コートのせいでもペースのせいでもスパイクのせいでも無い。 そもそも元々その身体に既に問題を抱えていたのだ。 それがある切っ掛けで破綻し、痛みとして表面化してきただけである。 痛みとして出ただけ良いと考える。 長距離選手に多いオーバートレーニングシンドロームで慢性疲労に陥ってしまったら、是はかなり最悪である。
書いたらキリが無いが、元々体幹に問題があり、それを補正する為に理想では無い下肢の動きで補っていたとしよう。 それが破綻し、足関節・膝関節を痛める。 痛めた患部だけ治療すれば、それは楽になる。 しかし根柢の体幹の問題を解決しなければまた痛め、根深く長引かせる結果につながる。 コルセットやサポーターを完治後予防で使うなら良いが、痛いから使うのであれば楽にはなるが決して治りはしないのだ。
こうすれば治るなどと言うセオリーは無い。 ある医学部の講師の先生が言っていたが、病歴あっての診察と言っていた。病歴は診察所見より個人差が無いからだと。病歴は身体所見より感度が高いからだ。
世の中には二種類の病気しかない。 一つは「医者がいなくても治る病気」と、「医者がいても治らない病気」、出来る事は患者さんが治るのを邪魔しない事。 是が名医の条件だと言っていた。
挫けず諦めず、ただただ前進するのみだ。